あまだまのスンドコ日記

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首なしライダー【ホラー怪談小説】

 

 私ってさ、暴走族やってるからさ、よく単車に乗るんだ。私は女なんだけど、ビシッと黒い特攻服を着てさ、改造した原チャリに跨がってさ、爆音を轟かせて走っているんだ。風を切って颯爽と走るのは、めちゃくちゃ気持ちいいんだよ。こちとら暴走族じゃ!舐めんじゃね!で、たいてい 走る場所は決まっているのだけれども、それは地元の町はずれの峠道なんだけど、実はそこに魔のカーブと言われている危険なカーブがあってその辺りに幽霊が出るという噂があるんだ。何でも、昔バイクに乗った若い男女がスピードの出し過ぎで、そのカーブを曲がりきれず、ガードレールに突っ込んで死んでしまうという事故があったらしいんだ。そして、それ以来、魔のカーブ付近で若い男女のお化けを見たという目撃情報が続出するようになったんだ。 でもね、私はそんなのちっとも信じていなかったんだ。だって、私は今までお化けを1度も見たことがなかったから、どうせそんなの都市伝説の類の話だろう、なんて 私はその噂を少しも信じていなかったんだ。けれども、1週間前の夜中ついにそれを見たんだ。お化けを…。

 その日も、私はいつものように1人で峠道を走りに行ったんだ。私は、かなりのスピードを出して暴走するから特攻服の裾が風に煽られ、ひらひらと舞い上がるんだ。 で、それが、ちょうど羽を広げたアゲハ蝶を背負いながら走っているように見えてね、私は自分のその華麗な姿を想像して、もう、一人でうっとりしながら原チャリをかっ飛ばしていたんだけれども、すると魔のカーブにだんだん近づいてくる頃もう一つ単車のエンジンの音が聞こえてくるんだ。おやと思って私はピースサインのバックミラーを覗いたんだけど、そこには何も映ってないし、振り返ってみても私1人だけ。なんだか怖くなっちゃって、振り切るつもりでアクセルを全開にして、スピードを上げたんだ。そして、もうそろそろ魔のカーブにさしかかろうとする時に、とうとうそれは姿を現した。急に後ろのエンジン音が大きくなると思うやいないや、突然 1台の単車が私を追い抜いてその後すっと消えたんだ。一瞬のことだったけど私にはちゃんと見えたんだ。運転していた男は首がなく、後部シートにまたがる女は、その胸の辺りに千切れた男の首を抱えながらニヤニヤと笑っていたんだ。